【YouTube公開】令和6年度秋田県立大学卒業式・大学院修了式を執り行いました
令和7年3月25日(火)、秋田キャンパス講堂において、「令和6年度秋田県立大学卒業式・大学院修了式」が執り行われ、学部生364名(システム科学技術学部231名・生物資源科学部133名)、大学院生90名(システム科学技術研究科64名・生物資源科学研究科26名)が決意と希望を胸に卒業・修了し新たな一歩を踏み出しました。佐竹 敬久 秋田県知事をはじめ、多数のご来賓並びに保護者の皆様方のご臨席いただき厳かな雰囲気で式は進行し、福田裕穂学長から各学部及び各研究科の代表学生に学位記が授与されるとともに、本学を巣立つ卒業生・修了生に向けて式辞を述べ、卒業生・修了生の新たな一歩を祝いました。
■福田裕穂学長式辞
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卒業式ダイジェストムービー
卒業証書・学位記授与
卒業証書・学位記授与
卒業証書・学位記授与
卒業証書・学位記授与
学生表彰
学生表彰
学長告辞
来賓祝辞 佐竹秋田県知事
送辞 情報工学科 髙橋 優翔 さん
答辞 アグリビジネス学科 鈴木 日向 さん
学歌斉唱
学歌斉唱
学長式辞
本年度、システム科学技術学部において、231名、生物資源科学部において、133名が学士号を取得し、大学院システム科学技術研究科では、62名が修士号、2名が博士号を、生物資源科学研究科では、23名が修士号、3名が博士号を取得し、大学を卒業、大学院を修了します。大学を代表しまして、皆さんの卒業及び修了を心からお祝い申し上げます。
皆さんは、長い学生生活を終えて、いよいよ社会へと羽ばたきます。長い間の勉学、本当によくがんばりましたね。また、この長い勉学の期間を支え続けた、保護者をはじめご家族の皆様に心よりお喜びを申し上げます。皆さんは大学で何を学びましたか。解答のある課題の解き方を中心に学ぶ高等学校までの勉学と違い、大学での勉学は、自主研究や卒業研究に代表されるように、解答が示されていない課題に正面から向き合い、解答に向かう道が用意されていない中で、手探りで道を作っていく作業でした。たとえ解答に辿りつけなくても、こうした自らのアイデアで方法も考えながら課題に向かうというアプローチは、社会において最も重要な作業です。ぜひ大学での皆さんの学びを、社会での活動に活かしてほしいと思います。
秋田県立大学は1昨年の9月に秋田県立大学ビジョン2033を発表しました。その中で、教育に関してのビジョンも発表しています。教育のビジョンは「知の器を広げるータフでやさしく挑戦的に」としました。タフでやさしく挑戦的を英語で言うと、Tough, Inclusive and Challenging、略してTIC。皆さんはTICの基礎を大学で身につけたと信じています。社会に出てからは、これを是非実践してください。
アメリカ大リーグドジャースの大谷翔平選手が昨年50-50を達成したことは記憶に新しいと思います。本塁打54本、盗塁59という数字もとてつもない記録ですが、皆の胸を打つのは、近代野球になってから誰もやったことのない投手とバッターの二刀流として大リーグに挑戦し、それを成し遂げた。しかも、その絶頂の最中に、肘の手術をしてしばらく投げられなくなったにもかかわらず、新たな挑戦として、盗塁に取り組み、盗塁と本塁打の両方の記録も作ってしまうという、タフさと挑戦力、さらにはそれを成し遂げるための研究力と膨大な努力に感嘆するからだと思います。タフさとはピンチをチャンスに変える力でもあります。大谷選手の場合には投げられないことで盗塁に磨きをかけました。
私の友人に生態学研究を志していたけれど、大学院の入試に落ちて、1年間留年することになってしまった人がいます。彼は、留年した1年間を利用して英会話を徹底的に学びました。そして、1年後、環境庁に入省したのですが、この英語の力と元々好きだった自然探索を活かして、環境庁の国際事業を担います。そして、ワシントン条約などの国際的な環境対策のフロントで活躍することになりました。まさにピンチをチャンスに変えたのでした。みなさんも社会に出て、タフさと挑戦性を発揮して、自分の人生を切り開いていってほしいと思います。
残念なことに、最近の世の中は、力のある人々や国々が覇権を唱え、分断を作り出し、その境界にいる人々や弱者を切り捨てる極めて不寛容な世界へと変わりつつあります。しかし、このような政策が平和で豊かな世界を作るとは思いません。社会への不満、人間不信、暴力、差別を生み出し、結果的に世界を不安定にするのではないかと恐れています。今こそ、人類は、誰一人取り残さないというInclusivenessの精神を発揮するべき時なのです。Inclusivenessは差別や分断とは対極にある精神です。制度としては難しくても、個人個人の意識としてこれを実践することで、ともに心安らかに暮らすことのできるコミュニティーができていくと考えます。今の余裕のない世の中にあってInclusivenessを声高に主張することは、なかなか勇気のいることかもしれませんが、みなさんには、この精神を持ち続けてほしいと思います。みなさんの小さいInclusiveな活動の積み重ねがきっと平和な社会へと導いてくれると信じています。
最後に一つ、みなさんが知らず知らずに身につけた力について話をさせてください。それは、「地方力」、秋田という地で数年間学びかつ生活した中から身につけた力です。もともと秋田にいた人は、他の地域の人たちと生活をともにすることでそれが磨かれ、秋田に来た人にはそれが新たに身についたのです。地方力は、自然に対する磨かれた感性―身近な自然を美しいと感じたり、雄大だと感じたり、怖いと感じたり、時に応じて感じ分けることのできる力、人の優しさやいたわりを大切に感じかつ実践できる力、地域に住む多様な世代の人たちとコミュニケーションをとる力、地方で先鋭化している課題を自分のものとして感じることのできる力、それから愚直さを実践する力などの総和です。人によって力の強さや力の割合は違っていても、大都市にいたら十分には身につかない力です。私自身は地方に生まれ育ち、長いこと東京で暮らしてきましたが、東京にずっと違和感を持ち続けていました。私の周りにいた東京の人たちは、驚くほど何でも知っていて造詣も深く、考え方もスマートなのですが、何か欠けているように思えたのです。多分、それが地方力です。
石破首相は政策の柱として地方創生を掲げています。これは当然の発想ですし、この地方創生なくして未来の日本はありません。食料、エネルギーのことを考えても、地方の力なくしては、大都市の今後の発展はありません。また、少子高齢化などの課題が地方で先鋭化していますが、これは世界的な課題であり、秋田や地方の課題を解決する中で、世界に通用する新しいシステムや技術が生まれるのだと思います。地方はまさに未来のためのシーズをたくさん持っているということになります。こうした考えから、東京の人たちにも課題のフロントを提供し、地方力を身につけてもらおうと、この4月には秋田県立大学と東京大学との間で包括協定を結び、互いに学生と教職員の行き来をすることにしています。
学部を卒業また大学院を修了される皆さんにおかれましては、どうぞそれぞれの場所でこの地方力を発揮して、所属される会社だけでなくその地域の活性化に努めていただきたいと思います。特に県外に出られる皆さんは、この地方力が弱ってきたなと感じるような時にはいつでも、秋田にお戻りください。大学はいつでもみなさんのため、門戸を開けて待っています。
卒業、修了される皆さんが健康に留意され、それぞれの環境の中で成長し、活躍されることを祈念し、学長の告辞とします。本日は卒業・修了、誠におめでとうございます。
令和7年3月25日
学 長 福田 裕穂